蘭陵王SS ”訂婚”
2015年 12月 07日
こんばんは
とうとう20話目となりました
今回は周から無事に帰りついて、
お妃教育が始まろうとする少し前のお話し。
”訂婚”
蘭陵王と雪舞は無事に斉国へ戻ることが出来た。
二人の婚儀はあと10日あまりと迫ってていたが、周国に居たため、婚儀の準備については何も出来てはいなかった。
二人が揃って敵国の周にいることを、皇帝と皇太后にも知れずに済んだのは、弟である
安徳王が機転を利かせて、ある嘘をついていてくれたからだった。
可愛い孫粛の為に、婚儀の準備を心配して蘭陵王府を訪れた皇太后に、
『兄者と雪舞殿は、雪舞殿の唯一の肉親であるお祖母様に、結婚の許しを頂きに雪舞殿の故郷の村に出かけました』
『それで、二人はいったいいつ帰って来るのだ』 と問う皇太后に
『雪舞殿の故郷は、たしかこの鄴より、遥か辺境の地にあると兄者から聞いております,行き帰りだけで半月はかかると思われますが・・』
『そうか、それならばしかたあるまい、婚儀の準備はわたくしの見立てで勝手に用意をさせてもらうが、それでよいな。本来ならば花嫁側で準備を整えるのが筋だが、民の出の雪舞に、王室との婚儀の支度など、とうてい無理な話というもの』
その雪舞は皇太后自らが選んだ花嫁であった。そしてかわいい孫の粛にも、婚儀のことで肩身のせまい思いなどさせたくはなかった。
『おばあ様自らのお見立てとあらば、兄者も喜びましょう、兄者の着ている衣のほとんどは、おばあ様の見立てと承知しております・・』
『延宗や、そなたには世話を焼いてくれる実の母がいる、それにしっかり者の正妃に、よけいな世話まで焼いてくれる側室たちも大勢おるが、粛の世話を焼いてくれるおなごは、今までこのわたしと亡くなった乳母のふく以外いなかったのだ、いいか焼きもちを焼くでないぞ 』
『そう、これまで他の兄弟とは違い、母方の後ろ盾のない兄上は、はしないでいい苦労を沢山かかえ育ってこられました。なれどこれからは雪舞殿が兄者のいままでの苦労を幸せな物へと変えてくれることでしょう』
『そなたの口からそのような事を聞くとは、延宗や、そなたも成長したのう。それにしてもあの非凡なる孫娘を育てたお祖母さまなるお方とは、いったいどういう方なのか一度会って見たかった、婚儀の際に会えるのが今から楽しみだ』 と機嫌を良くした皇太后は、王家令に細かな準備を差配した後、3日後には皇宮へと帰っていった。
そして蘭陵王から周より再び文が届けられて、延宗自らが周との境にある村へ蘭陵王と雪舞を出迎えに行くと、出迎えてくれたのは村人ではなく、なんとそれは周の禁衛軍であった。
本来ならば婚儀までの甘いひとときを過ごすはずの二人は・・・
ささいな口論が元で雪舞は宇文邕にさらわれ、雪舞を守る為に禁衛軍にまで化けた蘭陵王。
雪舞が頼まれた宇文邕の姪、貞の治療も終えたすぐ後には周の内紛にまで巻き込まれたが、それもなんとか切り抜け、やっと周を抜け出すことが出来た、
だが蘭陵王と雪舞を待っていたのは、周軍に捕まった弟延宗と、周の皇帝宇文邕の一群だった。
周に残ってくれと懇願する一国の皇帝に対しきっぱりとした態度で断りを入れる天女
『わたしはこの人に嫁ぐの』 と蘭陵王を見つめる雪舞に対し、動揺を隠しながら宇文邕が語る
『今そなたを奪えば盗族になったと言われる、それこそ笑い者だ、楊雪舞忘れるでないぞ、一生の約束だ、これより我らは生涯の友となる』 といい三人を解放してくれた,
そして蘭陵王には斉との停戦を記した書簡を手渡してくれたのであった。。
王府に戻って来た雪舞がまず早速行なったことは、自らの身だしなみを整えることははなく、
蘭陵王との甘い時を過ごすことでもなく、長旅で疲れ泥だらけとなった蘭陵王の愛馬踏雪の身体を綺麗に洗ってやることだった。
そんな雪舞がいっそうたまらなく愛しく、抱きしめたい衝動にかられる蘭陵王だった。