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蘭陵王SS ”悲愛”

おはようございます

本当に久々の蘭陵王SSをお届けします。
今回で27話目となります。舞台は雪舞と蘭陵王が蘭陵王王府で、お互いを想い悲しい別れを選んだそのすぐ後から始まります。

”悲愛”

蘭陵王府の門前で、去っていく雪舞の乗った馬車を見つめながら長恭の心は、もう自らではどうすることも出来ない深い悲しみに泣く事さえも出来ず、今はじっと悲痛な想いに耐えるしかなかった。
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別れることが、君を守ってやれる唯一の道、
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初めは不思議な女人の雪舞に興味が湧き、ただ我が手元に置いておきたいそれだけであった・・・
だがいつの間にか、愛する女人となりわたしの心の中を大きく占拠していった雪舞
君と再び出会えることなど二度とかなわないだろう私は今日を限りに君への想いを、この胸の奥深くに封印する、私の分まで、どうか乱世とは無縁の平安で幸せな一生を生きていってほしい・・・

長恭が母以外で生まれて初めて愛した女人であった。
明日はとうとう妃を選ぶ日、だが雪舞以外に、もし誰かを妃に選んだとしても、その女人をけして愛することなど出来ない。

《やはり皇帝の意に逆らうことになるが、妃選びは断ろう、それが元で罰を受けることになろうと、それはそれで仕方があるまい、やはり自分の心に嘘はつけない》 と長恭はすべての女人を断り、これから一生涯、一人身を貫き通す決意を固めた。

祖挺の寄こした間者に付けられた胸の傷の痛みよりも、雪舞との別れが心の深傷となり、彼の心を締め付け、悲痛の叫びをあげていた。

雪舞の姿はもう二度と見ることもかなわないだろう。
女人の湯で初めて出会い、
誓いの帯を受け取ったときの嬉しそうなあの顔、
そして手を握り女媧様の前で二人で誓った夫婦の契りの言葉、
添い寝をしてくれた時の寝顔、
そして私の為に自らの命を懸けてまで解毒薬を手に入れてくれた・・・。
『あなたのそばにいる女人は、けして私ではないの、鄭という女人なの』 と頑なに言いながら悲しそうな顔をした雪舞。
それがまるで昨日のことのように思い出されて、別れの悲しみがさらに増すばかりの長恭であった。

そしてとうとう眠れぬままに妃選びの朝を迎えたのだった。


一方雪舞は暁冬が操る馬車に揺られながら、愛する長恭がそっと手持ち袋に忍ばせた玉佩を見つけると、それを強く握り締めては涙が溢れて止まらなかった・・・・。
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私と殿下では住む世界が違いすぎる、もう二度と会うこともかなわない、
殿下のことは今日限り忘れるしかないの・・
殿下にふさわしいのは、あの鄭さまなの、けしてわたしではないの・・・と自らに強く言い聞かせる雪舞であった。
だが溢れ続ける涙をどうしても止めることができなかった。

その王府の柱の影から、雪舞が蘭陵王と別れ去っていく姿を見つめていた人影があった。


それは雪舞から 『殿下をお願いね』と託された鄭児であった。
『これで雪舞という邪魔者も去ったわ・・・祖挺さまの下さったお守りが効いたみたいね、、明日はワタクシが殿下の正妃に選ばれる、きっと、きっと殿下は、このわたくしを選んでくださる・・ああ今宵はとても眠れそうにないわ』 と蘭陵王への恋慕にふける鄭児であった。
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 画像来源・・・YouTube蘭陵王13話                                         

by syouhou36 | 2016-03-13 07:38 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS "白山村の旅立ち”

こんばんは

蘭陵王第25話目は
今宵は雪舞が消えた後の白山村のお話し



”白山村の旅立ち”


蘭陵王に仮面を届けるため、祖母にだまって初めて白山村を飛び出していった雪舞

いつまで経っても帰ってこない孫娘を危惧した祖母楊林氏は、雪舞を迎えにいくために不自由な目の代わりを村長(むらおさ)の孫の少年に頼み、少年と共に雪舞を取り戻すため鄴の街へとやって来たのであった。

そして『この祖母と蘭陵王のどちらか1つを選ぶしかあるまい』という選択を迫る形となり、雪舞は、苦渋の選択の末、蘭陵王の命を救うために、育ててくれた祖母ではなく蘭陵王を選び祖母の元から去っていった。

祖母楊林氏は、それが孫娘の雪舞に与えられた天命だと知りながらも、雪舞がこれから歩む険しい人生を思うと是が非でもそれを止めたかった、だがそれはかなわなかった。

楊林氏自身が巫族の天女といえど、孫の雪舞に与えられた天意を止めることは出来なかった。

雪舞を連れ戻すこともかなわず失意のままに白山村へと戻った楊林氏に、村長以外の村人達から怒りの矛先を一気に向けられ、激しく攻め立てられた。

『雪舞が村の掟を破り余所者を村に入れたから、天からの罰があたり、このままでは我ら巫族が再び乱世の世に利用されて、あげくのはてに一族を根絶やしにされてしまう、
雪舞のせいだ!雪舞がこの村に不幸を招き入れたのだ、お婆婆さまは、この責任はどう取るとるつもりか』
と皆がいっせいに騒ぎ立てた。

そしてあろうことか村長よりも偉い立場にある楊林氏にむけて、石まで投げ抗議するものまでいた。

村長は他所者に知れてしまったこの村を捨て、白山村を新たに他所に移すと公言した。

それは雪舞を呼び戻す前に楊林氏と村長とで決めたことでもあった。

雪舞がいまや斉の国で天女と騒がれ始めだし、この村に愚かな亡者どもが天女を求めてやってこぬうちに、巫族の一族をを守るためにも(雪舞が出自した)この白山村の存在そのものを世間から消す必要があった。


そしてその半月後に、村人達全員と家畜にいたるまですべてが他所の地へ移っていった。
だがそこには雪舞の祖母である楊林氏の姿だけがなかった・・・。


それはなぜか?
あの日に村人が怒りに任せて投げた小石が楊林氏の頭の急所に当たり、倒れてしまい、
倒れた2日後に息を引き取っていたのだった。

そして村長が彼女の遺言に従い、住んでいた家の裏庭に埋葬され、天女・楊林氏の墓が建てられたのであった。

楊林氏は息を引き取る間際に村長にあることを頼み息を引き取った。

『雪舞は必ず、この地へと必ず帰ってくる、どうか村は焼き払わずに、そのままの姿にとどめ村を去っていって欲しい』 と、

そして『我ら巫族の中に、近い将来新たな天女が生まれてくるはず、村長殿、後を頼みますぞ・・』

『お婆婆様、いったいどこの家に天女が誕生するのか?それだけでも教えてはくれか・・』 という問いには応えぬままま、楊林氏は息を引き取ってしまった。

そして楊林氏の願いどおり、白山村は焼き払われることなく、雪舞が戻ったときには、そのままの姿をとどめ村は無人の廃墟となっていたのであった。

楊林氏の最期に言った言葉とは・・・
新たな天女とはいったい誰を指すのであろうか?
天女と謳われる雪舞は、もうすでにこの世にいる存在。

それでは他所へ移り住んだ白山村の村人たちのいづれかの家にて産まれてくるのだろうか?だがそのことは亡くなった楊林氏のみぞ知る、老いたる天女の最後の予言となった。
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おしまい




by syouhou36 | 2016-01-16 21:03 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”虎の巻”

こんばんは

つたなき蘭陵王SSも今回で21話目となりました。
まったくどうしようもないくらいのめり込んでます。
この中毒症状は雪舞のおばあ様・楊林氏でも治せません。
今回はR-レベルなので、意に添わない方はどうぞスルーしてください。

”虎の巻”

婚儀を挙げて半月あまりが過ぎたが
蘭陵王の正妃である楊雪舞は己が得た蘭陵王妃という立場には、いまだ
馴染めずにいた。

唯一頼りとしたいはずの夫蘭陵王は、新婚早々から皇帝に国の財政がかなり緊迫していることを相談され、その対策に連日奔走しており、ここ二日ばかりなどは、帰宅も深夜を過ぎる有様
疲れて帰ってくる夫に、家内の雑事で煩わせることなど、けしてしたくない雪舞だった。

屋敷内のことは永年執事をしている王家令と侍女頭の小翠にほとんど任せることも出来たのだが、王族間の付き合いだけは正妃である雪舞自身の大きな役割であった。

民から天女様と崇められている雪舞であったが、元々は秘境の地、白山村の出、それも謎多き巫族の娘と聞いては、何ゆえそのような身分卑しきの娘が、自分達と同じ王族の嫁となりえたのか?気位高き王族の夫人たちには、そんな雪舞がどうにもこうにも気に入らなかった。

雪舞が女ばかりの集まりに呼ばれると、必ずといっていいほど王族特有の習慣を持ちだされて、不慣れな雪舞に恥を欠かせようと、幾人かが、あらゆる意地悪を仕掛けて来るのだ。
それを雪舞は、持ち前の聡明さと、ある秘策を用いて、どうにかこうにか切り抜けていた。
だが集まりに出かけて行くときには、社交の場ゆえ毎回どうしても、お妃教育の日に結われたへんてこりんな髪型を結わねばならず、それに付ける髪飾りの重さと共に、幾重にも重ね着る堅苦しい装束にも苦労させられる。

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その上、王族や家臣の妻たちにまで,ひそひそささやかれ好奇の目で見られて、意地悪までされては雪舞にとってその集まりは、ただただ疲れるだけの気の重い行事であった。

そんな社交の場になど、出かけたくはなかったが、高家の第四王子であり、尚書令という夫の立場を考えれば、けして夫に恥をかかせられない。

今宵もやっと社交の場より蘭陵王府に帰宅し、へんてこりんな重い髪をほどいて、衣を着替えると、どっと疲れが身体全体に押し寄せて来る・・・
いつの間にか書斎の文机に顔を伏せて眠ってしまっていた。
そして遅く帰宅をした夫にも気付かぬほど、深い寝息をたてて眠り込んでいる。

『奥様は今日も大変だったのです、李夫人など、わざと奥様の知らない王族の風習ばかり持ち出して来ては、それをわざと奥様に応えさせようとなさるのです。、まこといけ好かぬ御夫人です』

『李夫人とは、延宗のところのあの正妃のことか???』

『さようです、侍女のワタクシが殿下にこのようなことを申仕上げるのは、いけないことだと重々承知しておりますが、あまりに奥様がお気の毒でおかわいそうで・・
本来ならば兄嫁である雪舞様をかばうのが筋というものですわ、弟嫁であるお方が、かばうどころか先導きって意地悪ばかりをされるのですよ、ホントいけすかないったらありゃしない・・・』

(あのような性根の方だから延宗様が、側室をたくさん娶られるのだわと小翠は思った)

『それで今日の雪舞はどう応えたのだ』

『それが、奥様は王室の風習はまったく知らないお方のはずですのに、迷いもくその問いにすらすらとお答えになられたのですよ。、そればかりか、李夫人も知らぬ細かな知識までお応えになられたのです・・
他の御夫人方もそれはそれは大層驚かれてました。本当に胸がスーといたしました。
でも何故?奥様はそんなに詳しく王族の風習を知っておられたのでしょうか???
殿下が直じきに奥様にお伝えなされたのですか?』 
と怪訝そうに主人の顔を見つめ、うかがう小翠

『いや延宗ならばまだしも、ほとんど戦場(いくさば)にいたわたしだ、王族の細かき風習など知る由もない・・・』

長恭は思った、雪舞がいくら博識ある才女であっても、高家独特の風習など書物で調べようもないはず、延宗にでも聞いたのだろうか?いやいや詳しいとはいっても王族の女人独特の風習だ、・・・いくら延宗がくわしいとはいっても限度ある。』

『あ~そうか、おばあ様だ・・』

『そうですわ!、きっとそうです、でも殿下、皇太后様が奥様と会われたのは婚儀の日だけです、それもほんの半時だけですよ・・』

『一刻だろうと半時だろうと聡明な雪舞なら、すぐに会得できたはずだ、慣れない王家の暮らしで身体でもこわぬかと懸念しておったが無用な心配であった、それを聞いて安堵した・・』

そんな二人から心配されていた新妻は、夫に抱きかかえられ眠ったまま夫婦の閨へと運ばれていった。

雪舞が先ほどまで顔を埋めていた文机の鍵のついた引き出しには皇太后自らが綴った書物が二帖(冊)収められていた。

その一帖には高家の慣わしや風習と共に、一族の系譜や家臣の功績までもが事細やかに記されてあった。
そしてもう一帖は雪舞が初めて床入りする前に、必ず読んでおくようにと皇太后に特に念を押され手渡されたものだった。

そこに書かれていたのは初夜への心得えや、無事すませた後の始末までもがていねいに記されてあった。
そして睦事の種類やら、子を為すための秘策まで記され、見るも恥ずかしき挿絵までが描かれてあった。

斉の楚であった夫の高甚との間に戦乱のさなかに6人の王子と2人の公主を産み育てた皇太后の知識には、なによりの重みがあった。

眠ったままの雪舞が着ている帯に、なにやら小さき鍵のような飾り物?が結ばれている。
それを見つけた長恭は
『なんだ?この鍵のような飾り物は???まったく王妃となっても、君は変わらぬな
わたしはそんな君が好きなのだが・・』 と寝顔の新妻にむけ苦笑する長恭であった。


※虎の巻とは・・門外不出の秘伝が書かれている書のこと
          転じて教科書などに対する解説書のこと示す。
        
          古代中国の一つである『六韜』のうちのひとつである『虎韜』から
          虎の巻となった。


by syouhou36 | 2015-12-15 17:02 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”訂婚”

こんばんは

とうとう20話目となりました
今回は周から無事に帰りついて、
お妃教育が始まろうとする少し前のお話し。


”訂婚”

蘭陵王と雪舞は無事に斉国へ戻ることが出来た。
二人の婚儀はあと10日あまりと迫ってていたが、周国に居たため、婚儀の準備については何も出来てはいなかった。

二人が揃って敵国の周にいることを、皇帝と皇太后にも知れずに済んだのは、弟である
安徳王が機転を利かせて、ある嘘をついていてくれたからだった。

可愛い孫粛の為に、婚儀の準備を心配して蘭陵王府を訪れた皇太后に、
『兄者と雪舞殿は、雪舞殿の唯一の肉親であるお祖母様に、結婚の許しを頂きに雪舞殿の故郷の村に出かけました』

『それで、二人はいったいいつ帰って来るのだ』 と問う皇太后に
『雪舞殿の故郷は、たしかこの鄴より、遥か辺境の地にあると兄者から聞いております,行き帰りだけで半月はかかると思われますが・・』

『そうか、それならばしかたあるまい、婚儀の準備はわたくしの見立てで勝手に用意をさせてもらうが、それでよいな。本来ならば花嫁側で準備を整えるのが筋だが、民の出の雪舞に、王室との婚儀の支度など、とうてい無理な話というもの』
その雪舞は皇太后自らが選んだ花嫁であった。そしてかわいい孫の粛にも、婚儀のことで肩身のせまい思いなどさせたくはなかった。
『おばあ様自らのお見立てとあらば、兄者も喜びましょう、兄者の着ている衣のほとんどは、おばあ様の見立てと承知しております・・』

『延宗や、そなたには世話を焼いてくれる実の母がいる、それにしっかり者の正妃に、よけいな世話まで焼いてくれる側室たちも大勢おるが、粛の世話を焼いてくれるおなごは、今までこのわたしと亡くなった乳母のふく以外いなかったのだ、いいか焼きもちを焼くでないぞ 』

『そう、これまで他の兄弟とは違い、母方の後ろ盾のない兄上は、はしないでいい苦労を沢山かかえ育ってこられました。なれどこれからは雪舞殿が兄者のいままでの苦労を幸せな物へと変えてくれることでしょう』

『そなたの口からそのような事を聞くとは、延宗や、そなたも成長したのう。それにしてもあの非凡なる孫娘を育てたお祖母さまなるお方とは、いったいどういう方なのか一度会って見たかった、婚儀の際に会えるのが今から楽しみだ』 と機嫌を良くした皇太后は、王家令に細かな準備を差配した後、3日後には皇宮へと帰っていった。

そして蘭陵王から周より再び文が届けられて、延宗自らが周との境にある村へ蘭陵王と雪舞を出迎えに行くと、出迎えてくれたのは村人ではなく、なんとそれは周の禁衛軍であった。

本来ならば婚儀までの甘いひとときを過ごすはずの二人は・・・

ささいな口論が元で雪舞は宇文邕にさらわれ、雪舞を守る為に禁衛軍にまで化けた蘭陵王。
雪舞が頼まれた宇文邕の姪、貞の治療も終えたすぐ後には周の内紛にまで巻き込まれたが、それもなんとか切り抜け、やっと周を抜け出すことが出来た、

だが蘭陵王と雪舞を待っていたのは、周軍に捕まった弟延宗と、周の皇帝宇文邕の一群だった。
周に残ってくれと懇願する一国の皇帝に対しきっぱりとした態度で断りを入れる天女
『わたしはこの人に嫁ぐの』 と蘭陵王を見つめる雪舞に対し、動揺を隠しながら宇文邕が語る
『今そなたを奪えば盗族になったと言われる、それこそ笑い者だ、楊雪舞忘れるでないぞ、一生の約束だ、これより我らは生涯の友となる』 といい三人を解放してくれた,

そして蘭陵王には斉との停戦を記した書簡を手渡してくれたのであった。。

王府に戻って来た雪舞がまず早速行なったことは、自らの身だしなみを整えることははなく、
蘭陵王との甘い時を過ごすことでもなく、長旅で疲れ泥だらけとなった蘭陵王の愛馬踏雪の身体を綺麗に洗ってやることだった。
そんな雪舞がいっそうたまらなく愛しく、抱きしめたい衝動にかられる蘭陵王だった。

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※訂婚とは・・婚約のこと


by syouhou36 | 2015-12-07 00:25 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”美丈夫”

こんばんは

今日から12月、、とうとう今年最後の月となりました。
師が走ると書いて師走(しわす)。
この熟語を見るだけで、なんだか忙しさが増してきますね。
忘年会にクリスマス、日頃なかなか出来ない場所の大掃除、仕事納め、そしてお正月のおせち準備、今年最後だ、さあがんばろう!


本日は蘭陵王SSの19話目


”美丈夫”

風になびかせた美しき黒髪、それを後ろ手にさっと掻き揚げていたあなた

初めて女人の湯でその姿を見つけたわたしは、後ろ姿のあなたを見て、思わず見とれて

”きれいなお姉さん”だと勘違いしてしまった。
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そして振り返ったあなたの面差しは、生まれて初めて見た、たぐい稀なる美しきおのこ
そのものだった。

美丈夫という言葉は、書物の中の絵空事だと思っていたのに。
女人の湯で殿下と出会い、まことの美丈夫が存在することを初めて知った・・・・

さわやかなる朝が訪れ、先ほどまで新妻の隣で寝息をたてて眠っていた夫は、
今朝はなぜか妻が目覚めるよりも早くに起き出し、長い黒髪に櫛を通していた。

永年戦場(いくさば)で戦い続けた殿下の掌(てのひら)は、とても大きくてごつごつしている
なれどその指先は細く長くしなやかで、美しく、殿下はそのしなやな美しい指先でこめかみの上に生える黒髪を少し摘まんで、その器用な指先で三つに編み始める。
そして左右対称に編んだのちに大きな手が髪をすべて掻き束ねて色艶やかな紐で頭天高くにきつく結わえてゆく。

その髪はまるで駿馬の尾のごとく美しく、その馬尾を見るたび、また彼に見惚れてしまう。

殿下と結ばれるまでは、その髪の造作はお付き者の手で成されていると思っていた
まさか殿下自らが髪を結っていたなんて思いもしなかった・・・・。

だから殿下はいつも絡んだ髪と朝から格闘しているわたしを見て笑っていたのね。

『そろそろ起きてはくれぬか雪舞、早く支度をせぬと、あっという間に昼になってしまうぞ・・
忘れたのか?今日から湖へ出かける約束であったろう・・
わたしに見惚れるのはそのくらいにして、さっ早く起きよ雪舞・・・』 と急かされる。

今の殿下とわたしは、高家繁栄の子作りの為、皇帝より暫しの暇(いとま)を頂戴した身

『一日も早く美丈夫な夫にそっくりな子を授けてください』 と天に向かって祈りを捧げる
雪舞であった。

一方長恭の方は、幼き頃よりいつも兄たちから”美女姐姐”とからかわれては嫌な思いをしてきた。生まれてくる我が子にだけは、そんな思いをさせたくなかった、
妻によく似た可愛い子が欲しいと思っていた。

そして二人は踏雪の背に跨り、二里先にある大きな湖をめざし、蜜月の旅へと出かけていった。

※美丈夫とは・・・容姿が美しく、体格が立派な男性

by syouhou36 | 2015-12-01 16:55 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”天女改嫁”

蘭陵王SSも18話目となりました

蘭陵王をわざと地方に派遣させて、その隙をねらい新皇帝をそそのかした鄭児と祖挺が
雪舞を新皇帝の元へ嫁いでくるようにしむけて、アホな皇帝も雪舞に命を下します。
高家一族のすごい実話も添えました。R15レベルです。
意に添わぬ方はどうぞスルーしてください。


"天女改嫁”

祖挺と皇后が、蘭陵王と雪舞を引き裂くために、策をねり”天女が皇帝の元にに嫁がなかったせいで、斉の国に干ばつが起きた”という噂を広めていた。
それに異を唱えた安徳王までもが、遠い晋陽にて水の調達をしてくるようにと皇帝の命が下された。

蘭陵王も安徳王もいない隙をねらい、その翌日には蘭陵王府の門前に雪舞を皇帝に嫁がせるため、大勢の兵士を伴った祖挺が、花嫁を乗せる輿を率いてやって来た。

『ここは俺がなんとかするから、奥方は裏から逃げろ』 という暁冬をいさめ、動揺する屋敷の者たちを静まらせると、雪舞は小翠一人に手伝わせて婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれたあの花嫁衣装に着替えるのだった。

満面の笑みを浮かべ震える手で団扇をもったあの婚儀の晴れやかな日が、暗黒の淵に沈もうとしている雪舞の脳裏に浮かんだ。

愚かな皇帝の命といえども皇帝の命に逆らい逃げること自害して果てて拒むことは、君下の妻である雪舞には許されない行為だった。

こばんで自害でもすれば、夫蘭陵王までもを死に追いやることとなる。
愛する夫を死への道ずれにはしたくなかった。

小翠に髪を結い上げてもらう間、雪舞はそっと袂の中へ用意してあった火樹銀花と火打ち石をそっと忍ばせ、小翠には夫蘭陵王への遺言となる言葉を伝えた、
『帰ってきた殿下に必ず伝えてちょうだい』

艶やかな花嫁衣装を身にまとった雪舞は、蘭陵王府の門を出たところで、いったん振り返り蘭陵王府を見渡した。

この屋敷で王妃として蘭陵王と暮らした幸せだった日々、あの婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれた言葉が甦り、また涙が溢れ止まらない

(まさかこの花嫁衣装が死に装束になるなんて、思いもしなかった。そう愛する殿下を守れるのならば、この命いつ捨てても惜しくはない)

祖挺に即され雪舞が迎えの輿に乗り込む、それを王府の者たち皆が、号泣しながら見送ったのだった。、

雪舞が蘭陵王の元から皇帝の側室として嫁ぐ、
それは斉の高一族の間において、けして珍しい話しではなかった。 

史実として蘭陵王の父・高澄の正妃であった元氏(を、夫高澄が早世したのちに、後を継いだ高澄の弟である高洋(文宣帝)が、元氏からすべての財産を奪ったうえ、兄の未亡人である彼女を無理やり犯した。
その理由が『昔、兄は我妻を犯した、だからその仕返しをしたまで』 と言いはなった。

またその文宣帝が早世し、その2年後に皇帝を継いだ高緯の父である武成帝が、兄の正妃であった李氏(昭信皇后)へ、従わなければ子を殺すと脅して、関係を迫り、李氏はやむなくそれにしたがった。そして後に妊娠し、息子の紹徳が母の李氏を尋ねて来たときに、それを知られたくなくて李氏は息子に逢う事が出来なかった。
だがその事実が息子に知れた李氏は、それを恥じて武成帝との間に生まれた娘を取り上げなかった。そのためその娘は生まれてすぐに亡くなってしまった。

自分の娘が亡くなったことで、怒りに狂った武成帝は、李氏の目の前で,見せしめとして李氏の息子の紹徳を、彼女の目の前で殺して見せた。

そして李氏を鞭打ち、血だらけで失神している彼女を生きたまま絹袋に詰めて、諸渠水(下水)へと投げ入れた。幸いにその袋の縄が解けて、李氏は奇跡的に蘇生したため、皇帝の命で尼寺へと送られたのだった。

まさに血塗られた一族
あの日囚人遊びの折に鄭児が言ったことが耳に残り、気になった雪舞は、そのことを雪舞の耳にはけして入れたくはない夫には秘密にして、雪舞なりに高家の隠された史実を調べていた。

今日の日のようなことが、いつ起きてもなんら不思議でない高一族の世界であった。

だからおばあ様は、高一族である殿下とわたしとの縁を断ち切りたかったのね、
殿下のお母様も、そう、そんな忌まわしき場所で、子を産んで育てたくはなかった
だから身ごもった身で一人で皇宮を抜け出し、市井で一人殿下を産み育てたのね。

殿下への操を守り、そしておろかな皇帝と鄭児、祖挺の三人を道ずれに火樹銀花で木っ端微塵となり、みごとに自決してみせる。・・

殿下と斉の民の為を守れるのなら、この身がどうなろうとかまわない。
わたしが逝った後には、民を思う殿下が必ず立派な皇帝となって、斉の国に太平の世を築いてくれる。

そして花嫁を乗せた輿が止まり、皇帝と皇后は輿から姿をあらわした雪舞を見て、それぞれが妖しい笑みを浮かべた。

『とうとう蘭陵王とお前を引き裂くことが出来た、これで殿下はわたし一人の者となる、
楊雪舞お前には、わたしが受けた百倍もの辱めを受けさせてやる、女としての至上の苦しみを味わうがいい・・』 と、心の中でつぶやく鄭児であった。

一方の皇帝高緯は皇后とはまったく別のことを考えていた。
『孫にも衣装というが、まったくふふ・・・楊雪舞がこれほど美しきおなごであったとはな・・,
今の今まで生意気なおなごだとしか思えなかったが、
皇后には天女は娶りしだい、どこかに幽閉すると言ってしまったが、蘭陵王があれほど固着し、愛したおなごだ、戦場での功労も起て充分に才も知もあるおなごだ、それに斉の民は天女を好いて、天女が救いの神のように思っているからな
この頃皇后の我がままにほとほと疲れてきたし、この際だから皇后の座を天女に挿げ替えてみるのも悪くはない』 と・・・


二人の思惑も知らぬまま、袖口から火樹銀花を取り出した雪舞は、天を仰ぎ、この場にはいない夫へ今生の別れの言葉をつぶやいていた。
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※改嫁とは読みとおりに改めて嫁にいくこと



by syouhou36 | 2015-11-29 23:30 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”絵心”

今日は昼過ぎから雨になり、だんだん気温も下がってきて雨も強くなって、
3連休の余波をうけて、てんこもりの仕事もやっと終わり、くたくた
あ~早く帰りたかったのに、
駅でバス待ちすること20分、溜め息とあくびとぼやきが交互に口をつく・・・
あ~ようやっとさきほど帰宅出来ました。ブログ表装も幻城仕様に衣替えいたしました
晩ご飯はオッちゃんがテイクアウトを買って来てくれるので。わたくしは
蘭陵王SS第17話目を投稿させていただきます。

”絵心”

蘭陵王が激務を終えて、ようやく蘭陵王府に帰ってきた。
だが出迎えてくれるはずの愛妻雪舞の姿が、今宵は門前にも、門内にもその姿が無い。

『ただいま帰った、雪舞は?』と出迎えた王府の執事・王家令に問うと、こまった顔をして
『実は、奥方様はただいま書き物をされておられる最中でして、どうしても手が離せぬそうです』と応えた。
『なに、書き物をして出迎えが出来ぬと?・・家令、雪舞にかばい立てせずに、正直に申して見よ、雪舞がまた居眠りしていて出迎えが出来ないのであろう』
『いいえ殿下かばい立てなどはいたしておりません、本当のことです』

『それでは、雪舞は書房にいるのか?』と問うと
『奥方様は西のお部屋に居られますが、誰もその部屋に通さぬようきつく申し渡されております、たとえ殿下でも通しては駄目だと、奥方様からのご伝言です』
『なに?わたしは雪舞の夫だぞ、それにこの屋敷の主(あるじ)でもある、そのわたしを部屋に入れるなとは雪舞は部屋に籠もりいったい何をしているのだ』

公務を終えて、ようやく愛する妻の元に帰ってきたのに、出迎えてもくれぬばかりか、部屋にも入ってくるなとは、わたしはまた何かで雪舞を怒らせたのだろうか?と長恭は己と雪舞の今朝の会話を思い出して見たが、いっこうに思い当たる節もなかった。
また鄭児の玉璜を受け取ったときのように閨を別にされては堪らんと、長恭はそのわけを聞くため雪舞の籠もる西の側室部屋へいき、入り口の外で見張りをしていた小翠や暁冬が止めるのも聞かず部屋に強行突破をした。

その部屋に入って見ると、とうの雪舞は床一面に何枚もの紙を広げて、なにやら一所懸命に絵を書いているではないか・・・
『雪舞出迎えてもくれず君はいったい何を書いて・・・』
その絵を一目見るなり、長恭の大きな瞳がさらに開いて、言葉はつまり身体は震え上がった。

『殿下お帰りなさい!あと少しで出来上がりそうなの、どうなかなかの出来でしょ・・殿下が婚儀の日に披露してくれたアノ絵にはとても及ばないけれど・・』
『雪舞、あれは、あの絵は絵師に書かせたものだと言ったであろう』
『うそ?絵師に書かせたものがどうしてあれほど鮮明にくわしく描けているのよ、アノ絵を見て殿下が描いたものだとすぐにわかったわ、だからわたしも殿下の絵心にあやかって描いてみたの』

雪舞の描いたその絵は、夫婦となってからすぐ鄭児の一件で夫婦の仲を試された日々を描いたものだった。
夫婦の戒めとして記しておかねばと、夫に内緒で幾日も掛けて描いていた雪舞であった。

e0348365_21401724.png
その壱・・羊の煮込みを美味しそうに頬張る殿下
その弐・・鄭児に蓮華で薬を飲ませている殿下(けして鄭児は描かず殿下のみの絵)
その参・・鄭児から玉璜を受け取る殿下(弐に同じ)
その四・・皇太后様に2度と妻を泣かせぬと誓いを立てる殿下
その五・・馬賊退治に出立するときの門前での殿下
その六・・馬賊退治の洞窟で妻に鄭児を側女として娶ると宣言した殿下
その七・・白山村で和解し抱きあう二人

長恭には七以外は、今すぐに燃やしてしまいたい絵であった。
その夜の殿下ですがあの毒矢の刺さった日以来の熱を出して、寝込んでしまいましたとさ。
 
おしまい

※これは雪ちゃんのかわいい復讐編として描いてみました。
ではまたね晩安053.gif


by syouhou36 | 2015-11-26 00:02 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”祈り”

こんにちは

今日は勤労感謝の日なり
毎年この時期は勤労に感謝しながら休日出勤でした。
それが今年初めてフツーに祝日を迎えています。

大好きな洗濯もお天気がすぐれず、おまけに肌寒い、周りの人は薄手のダウンまで着ています。
微博をのぞくと昨日も北京は雪でした、
34年前に同じ頃に訪れた北京はただ凍りつくくらい寒かった。でも雪景色はなかった。
昼間の気温がマイナス10℃以下の世界、
持ってきた服をいっぱいいっぱい重ね着をして、コロコロの姿で、万里の頂上に登ったことが
今ではとても懐かしい。
では余談はこれくらいにして、蘭陵王SS16話目です


”祈り”

蘭陵王こと高長恭とその正妃の鄭妃こと楊雪舞は、それぞれが天世するという苦行を乗り越え、字も無き民の”阿土と氷児”として生まれ変わった。
そして今は小さな村で、息子の平安と生まれたばかりの娘雪珠と、自給自足の慎ましき暮らしではあるが、親子四人の幸せにあふれる暮らしをしている。

ある日のこと、阿土は自らが造った金物の農具を売りに村から2里ほど離れた街に来ていた。
自給自足の生活でも充分であったが、ときおり街に出れば街の者たちから周の国の世情を聞けること、、そして農具を売って得た金で、いつも平安のために稀少な菓子や、流行(はやり)の玩具を買ってやるのだ楽しみであった。
そして今日は氷児にも村で手の入らない薬を頼まれていた。

阿土がいつも農具を納めている店に顔を出すと、その店の主人から『3日前に、この国の皇帝が崩御なされたんだ』と知らされた。
そうこの国の皇帝とは・・・
(あの宇文邕が崩御したのか)
店の主人の話しでは後を取った皇太子があまりにも頼りなく、あの斉の国の二の舞にならないかと今から大変だと。
阿土は急いで踏雪に跨ると帰路を急いだ、

『おかえりなさい、今日は早かったのね、頼んであった薬は手に入った?』と迎えた氷児の手を取ると何も言わずに、彼女を連れて裏山の小高い丘まで登ると
『どうしたの帰ったとたん、街でなにかあったの、もしかしてあなたの正体が?』
『氷児、いやここなら大丈夫だろう、雪舞、じつは宇文邕が3日前に亡くなったそうだ』
『阿、阿怪が・・・うそよ何ゆえ?何ゆえ亡くなったと言うの』
『街人の話しでは突厥に親征してすぐに病にかかり、3日前に崩御したそうだ』
『あの阿怪が・・』雪舞は夫の目の前で思い切り号泣してしまった、
雪舞の気持ちが痛いほどわかる長恭の心も苦しく辛い、今はただ、抱きしめて支えることしか
出来なかった

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蘭陵王にとっては敵国の王であり、雪舞を奴隷市場から救ってくれた恩人、そして自分が賜死した後に雪舞を託せた唯一の盟友であった。
托された宇文邕は蘭陵王遺志を継いで雪舞とお腹の子を守ってくれた。
そして暗君高緯によって苦しめられた斉の民に、平安な暮らしを取り戻してくれた名君でも
あった。

小高い丘の上に立ち、長恭と雪舞は周の都の方に向かってひざまずき、宇文邕へ哀悼の祈りを捧げた。
親子四人のこの暮らしは彼が与えてくれた幸せでもあった。

泣いて思い切り腫れた目をした初めて見る母の姿を心配してか、幼い平安が母の好き流星球花を摘んできてくれた。
その花を見て、また涙が溢れ出す雪舞であった。
『父さま、母さまは何でそんなに泣いているですか?』と心配そうにして問うと
『平安と母さまの命の恩人が亡くなられたのだ、母さまはそれで悲しくて泣かれているのだ』
『父さま恩人って?なんですか?』と幼子が不思議そうに問う。
『恩人か、恩人とは大変なときに助けてくれた人のことだよ、平安がもう少し大きくなったらまたくわしく話してあげよう、だから今日は母さまをそっとしておいてあげよう・・』といって一人夕餉の支度をはじめた。、
すすり泣くことだけで精いっぱいの母親に代わり、父親の阿土がお腹をすかせた平安に夕餉を与え、その側で赤子の雪珠を抱いて、慣れた手つきで重湯を飲ませていた。

そこには高長恭でも軍神蘭陵王でもなく、すすり泣く妻をそっと気遣いながら、二人のわが子に食べ物を作り与える、優しき父親阿土の姿だけがあった。


それからしばらくして・・・
周の国を継いだ宣帝は、わずか7ヶ月で皇帝の座をわずか7歳の長男・宇文桁に譲り、自らは大元皇帝となり酒色に走り、そして一年後には亡くなった。
宇文桁(静帝)の摂政をしていた楊堅が、静帝から※禅譲されて隋の国を建国し、周の国も姿を消した。

※禅譲とは血族でない者に皇位を譲ること。


by syouhou36 | 2015-11-23 11:51 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”月亮”

こんばんは

やっと蘭陵王SSの15話を投稿
今回は暁冬のお話。


”月亮”

弟の安徳王による粋なはからいで、高家の子孫繁栄の為のしばしの休暇を皇帝から頂戴することが出来た蘭陵王夫妻、翌朝早く蘭陵王・高長恭は愛妻雪舞を連れて、生家である庵へと旅立って行った。

残された屋敷の者たちの中に、彼女を手に届かぬ月になぞらえ、自らを雪舞の幸せを守る下僕として仕える立場に置いた暁冬がいた。


屋敷内で蘭陵王夫妻が仲むつまじくするのを目にするたび、暁冬の胸の奥はキュンと締め付けられた。
蘭陵王妃となったあの婚儀の日から、雪舞はけしてふれることの出来ぬ月のような存在となった。
雪舞の幸せだけを願い、彼女の僕(しもべ)として使えることだけが、今の自分に許された役割りなんだと、いくら頭ではわかっていても、心の奥に秘めた想いはどうしてもかき消そうにもかき消せかった。

そんな彼の寂しそうな顔を見てか、王府筆頭の侍女である小翠が、声を掛けてきた
『奥様がいないと、この屋敷もシーンと静まりかえって、あまりにも寂しすぎるわ』
『なっそうだろう、そうなんだ、奥方の声は、周りにいる者たち皆を暖かくしてくれる。不思議な力があるんだ』

と堰を切ったように次から次へと、また暁冬の奥方自慢が始まった。いつもならそれを止める雪舞もいない、絶妙な相づちを打ち、暁冬の奥方自慢をとことん聞き出してやる小翠だった。
そうこうしているうちに屋敷の使用人たち皆が彼ら2人の周りに集まり出し暁冬の話す
奥方雪舞のこれまでの武勇伝に聞き入った。
そう、この屋敷の者すべての物達が王府の女主人である雪舞を慕っていた。

『殿下と奥方の間に、一日も早く跡取りのお子が出来ればいいんだけどな、そうなればこの俺が一所懸命子守をしてやって、馬になって遊んでやるんだ』
『そうね、早く出来るといいわね、殿下と奥様のどちらに似ても、可愛くて賢いお子になるでしょう・・』

『そうだな、殿下に似たなら絶世の美女が生まれるだろうし、おのこなら雪舞・・あっいや、奥方の温情と勇気を譲り受けてほしい、そしたら殿下を越える軍神になること間違いなしだ・・』

夜空に光る満月の中に、雪舞とこれまで過ごしてきた数々の思い出を浮かべた。、
『さっおいらもそろそろ寝るよ・・皆おやすみ』と言うと、使用人の皆に背を剥けたままで部屋に帰っていった。
皆には気付かれなかったが、背を向け部屋に向かう暁冬の目には、雪舞への忍ぶ想いがかもし出す涙が溢れだして止められなかった。
(今頃、奥方は愛しい人の胸に抱かれているんだろうな、奥方の幸せがおいらの幸せなのに・・なのになんでこんなに、おいらの胸は苦しいんだろう)
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その同じ頃、斉のはずれにある蘭陵王の生家の小さな庵では、その中庭で蘭陵王夫妻が仲良く片寄せあって腰掛け、暁冬が眺めたと同じ月を見ていた。

『ねえ殿下ここに来たら、判ってるでしょうけど、あなたは阿土よ阿土、そしてわたしは氷児、
今宵から公務のことはすべて忘れてね、殿下がここへ来た目的が何か、わかっっているわよね』それだけ言うと、雪舞は夫に背を向けて、自ら発した言葉に照れていた。
それに答え
『ああっ、わかっているとも』と言うと、背を向けた妻をいきなり抱きかかえて、にやりと微笑みながら、庵の奥にある夫婦の閨へと進み、まことの夜の軍神と化す蘭陵王であった。




by syouhou36 | 2015-11-22 01:31 | 蘭陵王SS | Comments(0)

蘭陵王SS ”玉璜のゆくえ”

下手な蘭陵王SSも第14話目となりました・・・・・。
本日は蘭陵王夫妻が揉めた原因の一つ玉璜が登場
本日は少し大人仕様です、好みに添わない方はどうぞスルーしてください
このブログ,蘭SSもあくまで自己満足仕様ですので。



”玉璜のゆくえ”

『労苦にあえいだ私を救って下さった方に、お礼の品としてこれを差し出すと菩薩に誓ったのです、どうか受け取ってください』と鄭児に言われて他意もなく受け取ってしまったばかりに・・・

最愛の妻雪舞からは
『玉の房飾りで恩情の結びとす、おなごが玉を贈るのは誓いの気持ちを伝えるためよ、玉を受け取ったということは殿下は鄭児の好意を受け入れたことになるのよ』と激怒され、そして閨までも
別にされてしまった蘭陵王。

そんな二人を心配して皇太后が一計を計り、ただちに玉璜を始末するよう即する皇太后に対し、蘭陵王は『玉璜は老李に預けて米に換えて被災民に配ります』と誓い、鄭児のことも老李に頼んで良き嫁ぎ先を探してもらい立派な嫁入り支度を整え嫁がせることを誓った。

だが皇太后が避暑に行ってしまった後、鄭児の悪意ある一言から、雪舞の仮病が蘭陵王に暴露されて夫婦の仲はますますこじれて終止のつかないままになっていた。
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そして老李に預けられるはずだった玉璜は、蘭陵王が雪舞ではなく鄭児を伴い馬賊退治へと出かける時には、蘭陵王の部屋から知らぬ間に消えていたことなど誰一人として知らなかった。
受け取ってしまった蘭陵王自身も夫婦がこじれた原因の品など二度と見たくもなかった。
老李に渡すよう王家令に命じることさえ馬賊退治の一件もあり忘れていた。

玉璜の事などまったく関心すらない長恭であった。
今の長恭の頭の中にあるのは、妻雪舞とのこじれた中を元に戻すことと、皇帝からの命を受けた馬賊退治の策を練ることでいっぱいだった。

はたして玉璜の行方は?・・・・・・・

雪舞は夫婦の諍いに眠れぬ夜を過ごし思い悩んだあげく、とうとう身体を壊してしまった。
そして寝込んでいるその隙を好機にとらえた鄭児は、誰にも頼まれもしないのに自分勝手に蘭陵王の身のまわりの世話をしていた。
まるで己が蘭陵王の妻であるかのように、鄭児は蘭陵王に皇宮で培われた知恵を振り絞り、雪舞にはけして真似の出来ない料理の腕をふるい、あろうことか裾がほころびた蘭陵王の下衣(下着)までも勝手に繕ったりしていた。
蘭陵王が夜公務から帰ってきて別棟にいる雪舞の元へ行こうとすると、言葉巧みに蘭陵王の心理を利用しそれを阻止した。

鄭児をやり込めることの出来るはずの筆頭侍女の小翠は、病に伏した奥方雪舞に付きっきりとなり鄭児の悪業にまで目が行き届かなかった。
そう皇宮で皇后付きの侍女だった鄭児には対峙できる侍女など誰一人としていなかったのだ。

鄭児は昼間勝手に蘭陵王夫妻の寝台にまで入り込んでは、蘭陵王の使っている枕を抱きしめ『もうすぐよ、もうすぐ殿下とわたしは、この閨で結ばれるのよ、今日まで大切に守ってきたこのわたしの純潔を殿下に捧げる日がやって来たのね、傷兵村に通い、他人の世話ばかり焼いて、殿下の下衣がほこびていることも気付かないお前に殿下の妻を名乗る資格なんてないのよ、でもそのおかげで、お前と殿下の仲をこんなにも早く裂くことが出来た、あと一歩、あと一歩で殿下はわたしのものになるのよ・・』そうつぶやく鄭児の顔はしてやったりとほほ笑んでいた。

そして蘭陵王の書房にある文机の引き出しに無造作に仕舞ってあった玉璜を取り出し、再び己の胸元へとしまったのだった。
『この玉璜は亡き父上がわたしに残してくれた唯一の宝なのよ、それを救民米に換えるだなんて、絶対に有りえないことだわ。殿下がそのようなことを言い出したのも、すべてあの雪舞のせいよ、わたしから正妃の座を奪った憎きおなご楊雪舞、見てなさい今度こそお前を地獄の底につき落としてやるから・・』そんな鄭児の思惑など、まったく知らぬ蘭陵王と妻雪舞であった。

そしてそのすぐ後、蘭陵王は自ら囮を買って出た鄭児を伴い、号泣する雪舞を王府に置いて馬賊退治へと出掛けたのであった。

馬車に乗る鄭児は至福の想いで溢れていた。
『蘭陵王府で結ばれぬことは少し無念だけれど、野趣あふれる幕間で結ばれるのも悪くないわ今宵が一生の想い出に変わるのね、うふっ今宵殿下に飲ませる媚薬も仕入れて来たし、殿下のお心は未だに雪舞にあるけれど、今宵わたしと身の契りを交わせば、それもすぐに終わるはず』

そして夜になり計画どうりに蘭陵王に差し出した酒の中へ羊金花なる媚薬を混ぜた、だが蘭陵王が配下の者たちへ分け隔てなく配ろうとしたため、あわてて鄭児はその酒をただの酒に換えて、策は無残にも未遂に終わった。

その夜幕間の寝台では今宵は叶わなかった床入りを思い眠れぬ夜を過ごした鄭児
玉璜を手にとり、それを見つめながら
『大丈夫、好機はまだまだあるわ、明日は殿下の閨に置く白湯に混ぜてみようかしら』と
蘭陵王に抱かれる我が身を頭に描き、薄笑いを浮かべては一人で身体を火照らせ、そうしてようやく眠りについた鄭児であった。

だがその夜に鄭児が見た夢は、我が身が傷だらけになりながら、二匹の獣に代わる代わる襲われている悪夢
翌朝、全身に汗をびっしりかいて目覚めた鄭児には異常な目覚めの悪さだけが残り、予知夢とされるその夢は、すべて記憶の中からは消されていた。、そう鄭児は恐ろしいその夢をなに一つ覚えていなかったのだ。

蘭陵王に玉璜を受け取ってもらう為についた大きな嘘で、鄭児にこのさき菩薩が大きな罰を与えることを彼女は知らなかった。

『菩薩に誓ったのです・・』と蘭陵王に大嘘をついていかにも信心深い女を演じ菩薩を利用したことを、天の上からちゃんとその菩薩様は見ていらっしゃったのです。


その後、彼女は雪舞の前で『鄭児はわたしが娶る』と蘭陵王に言わせて、夫婦の中をまんまと引き裂けた万々歳だわと思ったら、悪事はとうとう露見し、蘭陵王からはさんざんに蔑まれて、拒絶されて、あげくのはてに森に捨てられた・・・そして
まったく覚えていない予知夢が真実となってしまった。


”女禍さまの罰も怖い、菩薩さまの罰も怖い、やはり悪意ある嘘はついては駄目だよ”


※鄭児が酒に混ぜた羊金花とは・・・男性用催○剤のことです、媚薬という方が正しい。
 もしこのお酒を蘭陵王が飲んでいたとしたら、どうなったんだろう???
 あ~恐ろしい、そんなこと考えたくもない。007.gif
※羊金花は本当に中国漢方薬の中にありました、主成分が曼陀羅華といって朝鮮朝顔から
 抽出される成分で、猛毒、少量使えば料により幻覚剤や麻酔薬になる。日本では花岡青洲
 さんが初めて麻酔薬として使った薬。有吉佐和子さんの”花岡青洲の妻”が有名な小説。
 この曼陀羅華って、鄭児は高緯にも使っていた、ほんと恐ろしい女です!許せない。


by syouhou36 | 2015-11-12 11:55 | 蘭陵王SS | Comments(0)


大好きな中国俳優の馮紹峰さんのこと、お弁当や日々の暮らしを思うまま書いてます


by オバちゃん

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