蘭陵王SS ”天女改嫁”
2015年 11月 29日
蘭陵王SSも18話目となりました
蘭陵王をわざと地方に派遣させて、その隙をねらい新皇帝をそそのかした鄭児と祖挺が
雪舞を新皇帝の元へ嫁いでくるようにしむけて、アホな皇帝も雪舞に命を下します。
高家一族のすごい実話も添えました。R15レベルです。
意に添わぬ方はどうぞスルーしてください。
"天女改嫁”
祖挺と皇后が、蘭陵王と雪舞を引き裂くために、策をねり”天女が皇帝の元にに嫁がなかったせいで、斉の国に干ばつが起きた”という噂を広めていた。
それに異を唱えた安徳王までもが、遠い晋陽にて水の調達をしてくるようにと皇帝の命が下された。
蘭陵王も安徳王もいない隙をねらい、その翌日には蘭陵王府の門前に雪舞を皇帝に嫁がせるため、大勢の兵士を伴った祖挺が、花嫁を乗せる輿を率いてやって来た。
『ここは俺がなんとかするから、奥方は裏から逃げろ』 という暁冬をいさめ、動揺する屋敷の者たちを静まらせると、雪舞は小翠一人に手伝わせて婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれたあの花嫁衣装に着替えるのだった。
満面の笑みを浮かべ震える手で団扇をもったあの婚儀の晴れやかな日が、暗黒の淵に沈もうとしている雪舞の脳裏に浮かんだ。
愚かな皇帝の命といえども皇帝の命に逆らい逃げること自害して果てて拒むことは、君下の妻である雪舞には許されない行為だった。
こばんで自害でもすれば、夫蘭陵王までもを死に追いやることとなる。
愛する夫を死への道ずれにはしたくなかった。
小翠に髪を結い上げてもらう間、雪舞はそっと袂の中へ用意してあった火樹銀花と火打ち石をそっと忍ばせ、小翠には夫蘭陵王への遺言となる言葉を伝えた、
『帰ってきた殿下に必ず伝えてちょうだい』
艶やかな花嫁衣装を身にまとった雪舞は、蘭陵王府の門を出たところで、いったん振り返り蘭陵王府を見渡した。
この屋敷で王妃として蘭陵王と暮らした幸せだった日々、あの婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれた言葉が甦り、また涙が溢れ止まらない
(まさかこの花嫁衣装が死に装束になるなんて、思いもしなかった。そう愛する殿下を守れるのならば、この命いつ捨てても惜しくはない)
祖挺に即され雪舞が迎えの輿に乗り込む、それを王府の者たち皆が、号泣しながら見送ったのだった。、
雪舞が蘭陵王の元から皇帝の側室として嫁ぐ、
それは斉の高一族の間において、けして珍しい話しではなかった。
史実として蘭陵王の父・高澄の正妃であった元氏(を、夫高澄が早世したのちに、後を継いだ高澄の弟である高洋(文宣帝)が、元氏からすべての財産を奪ったうえ、兄の未亡人である彼女を無理やり犯した。
その理由が『昔、兄は我妻を犯した、だからその仕返しをしたまで』 と言いはなった。
またその文宣帝が早世し、その2年後に皇帝を継いだ高緯の父である武成帝が、兄の正妃であった李氏(昭信皇后)へ、従わなければ子を殺すと脅して、関係を迫り、李氏はやむなくそれにしたがった。そして後に妊娠し、息子の紹徳が母の李氏を尋ねて来たときに、それを知られたくなくて李氏は息子に逢う事が出来なかった。
だがその事実が息子に知れた李氏は、それを恥じて武成帝との間に生まれた娘を取り上げなかった。そのためその娘は生まれてすぐに亡くなってしまった。
自分の娘が亡くなったことで、怒りに狂った武成帝は、李氏の目の前で,見せしめとして李氏の息子の紹徳を、彼女の目の前で殺して見せた。
そして李氏を鞭打ち、血だらけで失神している彼女を生きたまま絹袋に詰めて、諸渠水(下水)へと投げ入れた。幸いにその袋の縄が解けて、李氏は奇跡的に蘇生したため、皇帝の命で尼寺へと送られたのだった。
まさに血塗られた一族
あの日囚人遊びの折に鄭児が言ったことが耳に残り、気になった雪舞は、そのことを雪舞の耳にはけして入れたくはない夫には秘密にして、雪舞なりに高家の隠された史実を調べていた。
今日の日のようなことが、いつ起きてもなんら不思議でない高一族の世界であった。
だからおばあ様は、高一族である殿下とわたしとの縁を断ち切りたかったのね、
殿下のお母様も、そう、そんな忌まわしき場所で、子を産んで育てたくはなかった
だから身ごもった身で一人で皇宮を抜け出し、市井で一人殿下を産み育てたのね。
殿下への操を守り、そしておろかな皇帝と鄭児、祖挺の三人を道ずれに火樹銀花で木っ端微塵となり、みごとに自決してみせる。・・
殿下と斉の民の為を守れるのなら、この身がどうなろうとかまわない。
わたしが逝った後には、民を思う殿下が必ず立派な皇帝となって、斉の国に太平の世を築いてくれる。
そして花嫁を乗せた輿が止まり、皇帝と皇后は輿から姿をあらわした雪舞を見て、それぞれが妖しい笑みを浮かべた。
『とうとう蘭陵王とお前を引き裂くことが出来た、これで殿下はわたし一人の者となる、
楊雪舞お前には、わたしが受けた百倍もの辱めを受けさせてやる、女としての至上の苦しみを味わうがいい・・』 と、心の中でつぶやく鄭児であった。
一方の皇帝高緯は皇后とはまったく別のことを考えていた。
『孫にも衣装というが、まったくふふ・・・楊雪舞がこれほど美しきおなごであったとはな・・,
今の今まで生意気なおなごだとしか思えなかったが、
皇后には天女は娶りしだい、どこかに幽閉すると言ってしまったが、蘭陵王があれほど固着し、愛したおなごだ、戦場での功労も起て充分に才も知もあるおなごだ、それに斉の民は天女を好いて、天女が救いの神のように思っているからな
この頃皇后の我がままにほとほと疲れてきたし、この際だから皇后の座を天女に挿げ替えてみるのも悪くはない』 と・・・
二人の思惑も知らぬまま、袖口から火樹銀花を取り出した雪舞は、天を仰ぎ、この場にはいない夫へ今生の別れの言葉をつぶやいていた。
※改嫁とは読みとおりに改めて嫁にいくこと
蘭陵王をわざと地方に派遣させて、その隙をねらい新皇帝をそそのかした鄭児と祖挺が
雪舞を新皇帝の元へ嫁いでくるようにしむけて、アホな皇帝も雪舞に命を下します。
高家一族のすごい実話も添えました。R15レベルです。
意に添わぬ方はどうぞスルーしてください。
"天女改嫁”
祖挺と皇后が、蘭陵王と雪舞を引き裂くために、策をねり”天女が皇帝の元にに嫁がなかったせいで、斉の国に干ばつが起きた”という噂を広めていた。
それに異を唱えた安徳王までもが、遠い晋陽にて水の調達をしてくるようにと皇帝の命が下された。
蘭陵王も安徳王もいない隙をねらい、その翌日には蘭陵王府の門前に雪舞を皇帝に嫁がせるため、大勢の兵士を伴った祖挺が、花嫁を乗せる輿を率いてやって来た。
『ここは俺がなんとかするから、奥方は裏から逃げろ』 という暁冬をいさめ、動揺する屋敷の者たちを静まらせると、雪舞は小翠一人に手伝わせて婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれたあの花嫁衣装に着替えるのだった。
満面の笑みを浮かべ震える手で団扇をもったあの婚儀の晴れやかな日が、暗黒の淵に沈もうとしている雪舞の脳裏に浮かんだ。
愚かな皇帝の命といえども皇帝の命に逆らい逃げること自害して果てて拒むことは、君下の妻である雪舞には許されない行為だった。
こばんで自害でもすれば、夫蘭陵王までもを死に追いやることとなる。
愛する夫を死への道ずれにはしたくなかった。
小翠に髪を結い上げてもらう間、雪舞はそっと袂の中へ用意してあった火樹銀花と火打ち石をそっと忍ばせ、小翠には夫蘭陵王への遺言となる言葉を伝えた、
『帰ってきた殿下に必ず伝えてちょうだい』
艶やかな花嫁衣装を身にまとった雪舞は、蘭陵王府の門を出たところで、いったん振り返り蘭陵王府を見渡した。
この屋敷で王妃として蘭陵王と暮らした幸せだった日々、あの婚儀の日に殿下が綺麗だと言ってくれた言葉が甦り、また涙が溢れ止まらない
(まさかこの花嫁衣装が死に装束になるなんて、思いもしなかった。そう愛する殿下を守れるのならば、この命いつ捨てても惜しくはない)
祖挺に即され雪舞が迎えの輿に乗り込む、それを王府の者たち皆が、号泣しながら見送ったのだった。、
雪舞が蘭陵王の元から皇帝の側室として嫁ぐ、
それは斉の高一族の間において、けして珍しい話しではなかった。
史実として蘭陵王の父・高澄の正妃であった元氏(を、夫高澄が早世したのちに、後を継いだ高澄の弟である高洋(文宣帝)が、元氏からすべての財産を奪ったうえ、兄の未亡人である彼女を無理やり犯した。
その理由が『昔、兄は我妻を犯した、だからその仕返しをしたまで』 と言いはなった。
またその文宣帝が早世し、その2年後に皇帝を継いだ高緯の父である武成帝が、兄の正妃であった李氏(昭信皇后)へ、従わなければ子を殺すと脅して、関係を迫り、李氏はやむなくそれにしたがった。そして後に妊娠し、息子の紹徳が母の李氏を尋ねて来たときに、それを知られたくなくて李氏は息子に逢う事が出来なかった。
だがその事実が息子に知れた李氏は、それを恥じて武成帝との間に生まれた娘を取り上げなかった。そのためその娘は生まれてすぐに亡くなってしまった。
自分の娘が亡くなったことで、怒りに狂った武成帝は、李氏の目の前で,見せしめとして李氏の息子の紹徳を、彼女の目の前で殺して見せた。
そして李氏を鞭打ち、血だらけで失神している彼女を生きたまま絹袋に詰めて、諸渠水(下水)へと投げ入れた。幸いにその袋の縄が解けて、李氏は奇跡的に蘇生したため、皇帝の命で尼寺へと送られたのだった。
まさに血塗られた一族
あの日囚人遊びの折に鄭児が言ったことが耳に残り、気になった雪舞は、そのことを雪舞の耳にはけして入れたくはない夫には秘密にして、雪舞なりに高家の隠された史実を調べていた。
今日の日のようなことが、いつ起きてもなんら不思議でない高一族の世界であった。
だからおばあ様は、高一族である殿下とわたしとの縁を断ち切りたかったのね、
殿下のお母様も、そう、そんな忌まわしき場所で、子を産んで育てたくはなかった
だから身ごもった身で一人で皇宮を抜け出し、市井で一人殿下を産み育てたのね。
殿下への操を守り、そしておろかな皇帝と鄭児、祖挺の三人を道ずれに火樹銀花で木っ端微塵となり、みごとに自決してみせる。・・
殿下と斉の民の為を守れるのなら、この身がどうなろうとかまわない。
わたしが逝った後には、民を思う殿下が必ず立派な皇帝となって、斉の国に太平の世を築いてくれる。
そして花嫁を乗せた輿が止まり、皇帝と皇后は輿から姿をあらわした雪舞を見て、それぞれが妖しい笑みを浮かべた。
『とうとう蘭陵王とお前を引き裂くことが出来た、これで殿下はわたし一人の者となる、
楊雪舞お前には、わたしが受けた百倍もの辱めを受けさせてやる、女としての至上の苦しみを味わうがいい・・』 と、心の中でつぶやく鄭児であった。
一方の皇帝高緯は皇后とはまったく別のことを考えていた。
『孫にも衣装というが、まったくふふ・・・楊雪舞がこれほど美しきおなごであったとはな・・,
今の今まで生意気なおなごだとしか思えなかったが、
皇后には天女は娶りしだい、どこかに幽閉すると言ってしまったが、蘭陵王があれほど固着し、愛したおなごだ、戦場での功労も起て充分に才も知もあるおなごだ、それに斉の民は天女を好いて、天女が救いの神のように思っているからな
この頃皇后の我がままにほとほと疲れてきたし、この際だから皇后の座を天女に挿げ替えてみるのも悪くはない』 と・・・
二人の思惑も知らぬまま、袖口から火樹銀花を取り出した雪舞は、天を仰ぎ、この場にはいない夫へ今生の別れの言葉をつぶやいていた。
※改嫁とは読みとおりに改めて嫁にいくこと
by syouhou36
| 2015-11-29 23:30
| 蘭陵王SS
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